「50歳からの英語」
英語学習者にとってこの映画〔第三の男〕の魅力はいろいろな英語が聴けることです。米語、上流階級の英語と庶民(コックニー)のもの、外国人が話す英語この4種類の異なった音がはっきり分かります。
 オーストリア人のポーターとの会話は、ノルマン独特の訛りで最も簡単な文型で話されます。
Mr.Lime's acccident....here in front of the house.
Have see it myself. Killed at once, immediately. Already in hell or in Heaven.
Sorry for the grave diggers. Hard work in this frost.

 一文が五単語以内で語られています。この長さが、初心者が頭の中で構文すること無しに話せる限度といわれています。

"今ごろは地獄か、でなきゃ極楽です。墓掘りにゃ気の毒、この霜じゃ骨がおれますからね。"

 文法的誤りがあっても アクセントと身振りで、相手にはこんなふうに伝わるはずです。
 話はちょっと横道にそれますが、一番簡単で有効な会話は、一単語英会話です。完璧主義者の日本人にはあまり好まれない手法ですが。
 例えば"駅は何処ですか"学校で習う英語は"Where is the station? これで4単語ですから、初級英語の限界です。完璧主義の日本人はさらにStationにtheを突けるべきか否かで悩みます。そのうえ礼儀正しい日本人は、習ったはずの丁寧な言い回しを思い起こそうと一生懸命です。"Could you tell meだったかなあ???Would you.......だったかなあ???"と、一向に先に進みません。
 でも、こんな時は、困った顔をして観光マップを片手にStation?
 これで完璧です。

 何かを頼むときは必ずPlease'をつけます。"第三の男"の中でも、MPがマーティンにpassportの提示を求める場面があります。Passport Please.です。
 普通は Can I see もしくはMay I see your passportです。
 Can I.. Could I . May I 〜 はとても便利で守備範囲の広いフレーズです。

 また、典型的上流階級の英語の響きは、英国の舞台俳優Trevore Howard〔日本ではあまり知られていない渋い俳優です。"80日間世界一周、逢引などにに出演〕演じるカロウエイ少佐の言葉の端から端まで染み付いています。
 江戸弁にも似た、付き人の軍曹の典型的下町弁との対称に英国の階級社会の縮図がみえます。
 英国人は階級に非常に敏感です。今では無くなりましたが、PUBには二つの入り口があり一つは商流階級用サルーン、もう一つが庶民用パブリックでした。また、話される言葉の抑揚、ボキャブラリー、服装はまったくといってもいいほどに違っています。良いか悪いかは別問題としても、それが現実でした。服装はいかようにもなりますが、言葉ばかりは一朝一夕にして直せるものではありません。
 その辺りを鋭くえぐったのが、バーナード・ショウの原作をミュージカル映画仕立てにした「My Fair Lady」です。これには彼の主張が華やかな映画をかりて主張されています。原作を読まれるとその辺りが良く分かると思います。
 また、オックスフォード訛り、ケンブリッジ訛りを教える学校があるとも聴いています。こんな感じで、上流階級に仲間入りをする為には、まず一流のPubulic Schoolに何が何でも入学させる。そしてケンブリッジかオックスフォードを出る。これしかないと中流階級の人々は血道を上げるのです。
 上流英語とはどんなものか・・・こればかりは文章で説明する事は不可能ですので、なにか良い方法を、このシリーズ連載中に発見し、皆様にお知らせしたいと思います。

 さて、カロウェイ少佐の英語は上流階級のものとはいえ、軍人ですので、歯切れが良く厭味の無いものですが、劇中British Councilの役人クラビン氏の英語は、これこそが上流階級英語のひけらかしの標本のようなものです。ビデオをお持ちの方は、今一度その辺りに留意してみてみてください。
 三文文士のマーティンを、米国一流作家と早とちりしてBritish Council主催の講演会の講師として招きたいと交渉する場面です。

 この辺りについては次回で詳しくお話したいと思います。
 それでは、また。


Copyright (C) 2002 Anglo Japanese Language Study Information Centre All rights reserved.